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東京地方裁判所 昭和50年(ワ)3000号 判決 1979年5月28日

原告

渡辺繁雄

被告

小沢勇

ほか一名

主文

一  被告らは原告に対し、各自五二八万〇、四八五円〔更正決定各自四八八万〇、四八五円〕とこれに対する昭和五〇年四月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は四分し、その一を被告らの、その余を原告の負担とする。

四  この判決第一項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは原告に対し、各自二、三二六万六、〇〇〇円とこのうち一、九四二万八、〇〇〇円に対する昭和五〇年四月二七日から、三八三万八、〇〇〇円に対する昭和五一年二月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生

(一) 事故

昭和四九年一月二五日午後四時一〇分、横浜市金沢区六浦町四、五三八番地先道路で、被告小沢が運転する貨物自動車が原告の運転する乗用自動車に追突した。

(二) 原告の受傷

頭部外傷、頸椎、腰椎捻挫を負い、翌日から昭和四九年一二月二六日まで三三五日入院し、そのご昭和五〇年一二月二七日まで実際に二六五日通院して治療を受け、同日症状が固定した。頸椎四、五、六椎間狭少変形著明、四、五上り症、三、四、五、六椎間孔狭少、腰椎5上り症の障害が残り、頭痛、頸椎、肩こり、左手シビレ、腰痛等の頑固な神経症状を呈しており、少くとも後遺障害別等級七級四号に該当する程度のものである。

2  被告らの責任原因

(一) 被告会社

加害自動車を保有し、自己のため運行の用に供していた。

(二) 被告小沢の過失

必要な車間距離を保つていなかつた。

3  原告の損害

(一) 入院雑費 一八万七、五〇〇円

(二) 通院治療費 一八九万四、八五〇円

(三) 診断書料 七、〇〇〇円

(四) 通院費 二四万円

通院のため、病院の近くにかりたアパートの借賃等のうち月二万円の割合で、昭和五〇年一月から一二月までの分

(五) 休業損害 三一五万二、三二八円

事故翌日から昭和五〇年四月一〇日まで休業した。当時の年収は二六一万五、〇〇〇円を下ることはない。

(六) 労働能力低下による逸失利益 一、一六三万四、六五八円

昭和五〇年四月一一日以降一〇年間、労働能力の五六パーセントを喪失した。(五)の年収を基礎とし、ホフマン式により現価換算すると一、一六三万四、六五八円となる。

(七) 傷害慰謝料 二三一万円

(八) 後遺障害慰謝料 三三四万円

(九) 弁護士費用 八〇万円

4  既払 三〇万円

損害賠償金の一部として三〇万円を受領したので控除する。

5  まとめ

よつて、被告らが原告に対し、各自、不法行為に基づく損害賠償金二、三二六万六、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満は切捨て)とこれに対する不法行為日ごの昭和五〇年四月二七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をせよと求める。

二  請求原因に対する認否

1(一)の事実は認め、(二)の事実は知らない、2(一)の事実は認め、(二)の事実は否認する。3の事実は知らない。

三  抗弁

原告にも急に交差点で左折を始めかけながら急停止した過失がある。

四  抗弁に対する認否

否認する。

第三証拠〔略〕

理由

一  交通事故の発生と責任

1  事故

請求原因1(一)の事実は当事者間に争いがない。

2  被告会社の運行供用者責任

請求原因2(1)の事実は当事者間に争いがない。

3  事故の原因

成立に争いがない甲第五号証の一ないし一四、被告小沢本人の供述によれば、この事故は被告小沢が時速四〇キロメートルで原告が運転する乗用車に追従するにさいし、安全な車間距離をとらず、また、その動静に対する注意も足りなかつたため、停止した原告車にひどく近付いて初めて気付いたというような過失によつて発生したと認められる。原告にも左折合図を出さず左折しかけて急停止した過失があると被告本人は供述するが、前方注視を欠いていた当人の言をそのままうのみにできず、他に原告の落度を認めるに足りる証拠はない。

二  原告の受傷

成立に争いがない甲第二、第三号証、証人野口の証言、原告本人の供述によれば、原告は事故当日磯子中央病院を受診、頭部外傷、頸椎・胸椎・腰椎捻挫という診断名の下に翌日から三三五日間入院し、年末の一二月二六日軽快退院したこと、その時点では事務作業ならば差支えない程度に改善されていたが、そのご昭和五〇年一二月二七日まで二六五日通院して治療を受けたこと、その間の原告の主たる訴えは頭痛、頸部痛、肩こり、左手シビレ、腰痛であつたが、昭和五〇年一二月二七日の時点で、長期の加療にかかわらず、訴える症状に変りが現われないため、症状固定と診断されたこと、ところで、成立に争いがない乙第九、第一一ないし第一三、第二一、第三〇号証、原告本人の供述によれば、原告は昭和四三年一二月三一日追突事故にあつて頸椎捻挫を負い、ながく治療を受け、昭和四八年二月一二日時点でも左頸部、肩から左上腕に、また背部から腰部にかけた痛みや左上腕と左手指のしびれ感を訴え、頸椎の変化が著明で変形性頸椎症と診断されたことが認められ、右事実と証人野口の証言を合わせると、原告が本件で主張する頸椎変形等の器質障害は本件事故前に既に存在していたと認められる。そして、以上の事実を総合すると、本件交通事故によつて発現した神経症状は事故前からのものに積重つた症状であると認められるので、このような症状に基づいて生じた損害については、六割の範囲で被告らの責任とするのが相当である。

三  損害関係

1  入院雑費 一六万七、五〇〇円

一日五〇〇円の限度で三三五日分を相当な損害と認め、その余は不相当である。

2  通院治療費 一八九万四、八五〇円

成立に争いがない甲第九号証の一ないし五による。

3  診断書料 三、〇〇〇円

成立に争いがない甲第一〇号証による。その余を超える額を認めるに足りる証拠はない。

4  通院費

原告本人の供述によれば、原告主張の公団住宅は本件事故前から原告が賃借していたことが認められるから、これと異なる事実を前提とする通院費の請求は理由がない。

5  逸失利益 三一〇万二、一二五円

二で述べた原告の受傷の部位、程度、治療の経過を前提とすると、入院中の一〇か月は得べかりし利益の全部を、通院期間中の一二か月はその三〇パーセントを、症状固定ごは後遺症に基づく労働能力の低下によつて、三年間に渡つてその一四パーセントを喪失したと認めるのが相当である。ところで、成立に争いがない甲第一一号証、原告本人の供述によれば、昭和四八年分の所得税の確定申告に当つては営業収入が二六一万五、〇〇〇円、経費一二八万七、三七三円、所得が一八四万二、六二七円と申告していることが認められ、これに原告の職歴や職種、年齢を合わせ考えると、昭和四九年賃金センサスの男子労働者平均賃金年額二〇四万六、七〇〇円を損害算定の基礎とするのが相当である。症状固定時における現価はホフマン式によつて換算する。

算式

2,046,700×(10/12+0.3+0.14×2.731)=3,102,125

6  慰謝料 二八〇万円

原告が蒙つた精神的損害の額は二八〇万円と算定するのが相当である。

7  清算額 四四八万〇、四八五円

以上の合計額の六割は四七八万〇、四八五円となり、この損害につき原告が三〇万円の弁済を受けたことはその自認するところである。

8  弁護士費用 四〇万円

原告が訴訟代理人に支払うべき費用のうち四〇万円を損害として相当と認める。

四  結論

よつて、原告の請求は、被告らが各自、不法行為に基づく損害賠償金五二八万〇、四八五円〔更正決定損害賠償金四八八万〇、四八五円〕とこれに対する昭和五〇年四月二七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払えと求める限度で理由があるから認容し、その余は失当として棄却する。民事訴訟法八九条、九二条、九三条、一九六条。

(裁判官 龍田紘一郎)

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